一葉

2009/11/23 11:53

 

今日は新嘗祭。日本の海、山、野、里がこれからも豊穣でありますように。また、わたしたち額にあるいは健康な肉体に汗を流して働く者たちの仕事場が広く守られますように、畏れながら天皇陛下と共に祈りを捧げようと思います。

 産経新聞の「次代への名言」という欄がすばらしかったので、ご紹介します。


人間の愛情は親を思ひ、妻(夫)を思ひ、また兄弟を思ひ、大にしては国を思ふ

 妻のところは、わたしが勝手に(夫)を入れさせてもらいましたが、はたして誰の言葉だと思われますか。
樋口一葉です。以下は、産経新聞文化編集委員 関厚夫氏による本欄から拝借いたしました。

『明治29(1896)年秋、上田(敏)はすでに不治の病にあった一葉を見舞った。2人には珍しく、宗教観や霊魂の存在が話題になった。「霊魂の不滅を信じます」と言う上田に対し、一葉は冒頭のことばのあと、こう続けた。「こうした愛の存在は、霊魂不死ということを証明する唯一の最も有力な証拠でございましょう」それからまもなく、同じ年のきょう、一葉は逝った』
24歳であった。

今日が一葉の命日であったとは初めて知りましたが、それにしても24歳にして冒頭の言葉。人間原理の信奉者であるわたしが言うのも変ですが、やはり神には何か特別のお計らいがあるのでしょうか。
先日2012という映画が封切りになったばかりですが、わたしたち人間は、自分自身が明日をも知れぬ身でありながら、杞の人のように天が空から落ちてこぬかというような心配をします。ですから、この映画のような人類滅亡をテーマにした人々の脳幹にある恐怖を煽りたてる映画が何度も何度も出てくるのです。
しかし、一葉が言うように、それは本当は人間が根源的に持つ深い愛情の証であり、これなくしては今日の人類の繁栄はなかったのだと思います。おそらく一葉は、ユングよりも先に人類の持つ集合意識的なものを感じ取っていた人だったに違いありません。恐ろしいほどに鋭敏な感覚の持ち主だったのです。

わたしは今日、5千円札をしみじみ見ながら心の中で静かに手を合わせようと思います。